気候変動に関する当社の方針
当社グループは、世界全体における気候変動による経済をはじめとしたさまざまな分野における影響の大きさに鑑み、地球環境保全への貢献を当社グループのサステナビリティ重要課題として認識しております。
当社グループが運営する公共交通機関は、自家用車と比べ、環境にやさしい交通手段であることから、これまでも公共交通の利用促進・モーダルシフトを推進する「ノルエコ(乗るだけでエコ)」を続けてまいりました。
さらに持続可能な経営を目指すため、昨今の脱炭素による気候変動への対応を世界的なテーマとして認識し、2021年度に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同する旨を表明、2022年度に長期環境目標として「京急グループ 2050年カーボンニュートラル」を策定のうえ、TCFD提言に基づく情報開示を実施し、以降毎年見直しを行い、開示内容の拡充を図っています。
今後も引き続き、シナリオ分析の深化等による開示内容の充実化を図るとともに、温室効果ガス排出量の削減に向けた施設・設備の導入等、「省エネ」「創エネ」「再エネ」に資する取り組みを積極的に検討、実施し、持続可能な社会の実現を目指してまいります。
TCFD提言による開示推奨項目
TCFD提言にて推奨される、4つのテーマに関する気候関連情報を開示します。
開示推奨項目 | |
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ガバナンス | 気候関連リスクと機会に関する組織のガバナンス |
戦略 | 気候関連リスクと機会がもたらす事業・戦略、財務計画への実際の影響と潜在的影響(1.5℃シナリオ等に照らした分析を含む) |
リスク管理 | 気候関連リスクの特定・評価・管理 |
指標と目標 | 気候関連リスクと機会を評価・管理する際の指標と目標 |
ガバナンス
当社におけるサステナビリティ推進体制
当社グループにおける気候関連のリスクと機会に関する対応方針の策定および取り組みを推進するため、気候変動への対応を含むサステナビリティへの対応を経営戦略と一体で取り組みます。経営戦略室長を委員長とする「サステナビリティ委員会」において、経営戦略およびサステナビリティに関する諸課題を議論し、「リスク管理委員会」との連携を図ったうえで、「取締役会」に報告・提言することで、「取締役会」が適切に管理・監督を行います。
気候変動対策に関するガバナンスの状況
会議体 | これまでの気候変動に関する主な報告・審議事項 |
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取締役会 サステナビリティ委員会 |
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役員報酬制度への環境指標の導入
2023年4月から、サステナビリティの取り組みを一層推進することを目的に、執行役員賞与の評価項目の一部に、非財務指標であるESG指標を新たに導入しました。環境については、CDP(※1)による評価結果を指標としております。また、ESG指標で評価される報酬の割合は、執行役員賞与のうち連結業績評価分(※2)の10%となります。
- ※1企業等の環境関連の戦略や取り組みなどを評価する外部団体
- ※2執行役員賞与のうち、連結業績を評価し決定する部分(職責や業務分担を考慮し、設定)
戦略(シナリオ分析)
分析対象事業
当社グループすべての事業
(交通事業、不動産事業、レジャー・サービス事業、流通事業、その他の事業)
シナリオの設定
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)等が公表をしているシナリオを参照のうえ、移行リスクと物理的リスクがもたらす影響の全体的な幅を捉えるため、設定シナリオを脱炭素社会実現シナリオ(世界的な平均気温の上昇を産業革命以前と比べて1.5℃程度に抑える)と地球温暖化が進展するシナリオ(平均気温の上昇が4℃以上となる)に分け、リスク・機会の特定と影響度評価、またリスクへの対処および機会を捉えた取り組みや今後の方向性を定めました。
設定シナリオ | 脱炭素社会実現シナリオ 1.5℃・2℃ ※3 |
地球温暖化進展シナリオ 4℃ |
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世界観(主なイメージ) | 脱炭素社会実現
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地球温暖化進展
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主な参照シナリオ ※4 |
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- ※3脱炭素社会実現シナリオにおける物理的リスクの影響は、2℃シナリオにおける影響と同等と想定
- ※4参照シナリオのうち財務的な影響の評価に使用したデータ等は別途記載
気候変動によるリスク・機会の特定ならびに時間軸および影響度の評価
分類 | 項目 | 該当事業 | 時間軸 ※5 | 影響度 | |
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移行リスク | 政策・法規制 | 政府や自治体等による規制強化(省エネ法、炭素税等)に伴うコストの増加 |
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中~長期 | 大 |
技術 | 開発コストの増加、省エネ設備等への投資不十分によるコストの発生 |
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長期 | 中 | |
市場 | エネルギー・資材の調達コストの増加 |
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短~長期 | 大 | |
環境配慮企業の増加に伴うリーシング不調 |
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短~長期 | 中 | ||
評判 | 社会における環境意識の高まりと対応の遅れによる顧客離れ |
|
中~長期 | 大 | |
環境対応の遅れや情報開示不足等に伴う投資家からのESG評価低下と資金調達への影響 |
|
短~長期 | 大 | ||
物理的リスク | 急性 | 自然災害の激甚化・頻発化に伴う施設や設備への被害増加と復旧コストの増加 |
|
短~長期 | 大 |
自然災害の激甚化・頻発化に伴う交通機関の運休増加や施設の営業停止とそれらによる売上の減少 |
|
短~長期 | 中 | ||
自然災害による沿線の観光資源の変化や損失に伴う旅客数の減少 |
|
中~長期 | 中 | ||
サプライチェーン分断による事業継続への影響 |
|
中~長期 | 大 | ||
水害多発エリアからの顧客流出 |
|
長期 | 中 | ||
予測不可能な気象による農畜水産物やその製品への影響 |
|
短~長期 | 大 | ||
慢性 | 農畜水産物の価格変動や調達の不安定化および気温の変化に対応しない商品構成による売上の低下 |
|
中~長期 | 大 | |
真夏日・猛暑日の増加による空調コストの増加 |
|
中~長期 | 中 | ||
真夏日・猛暑日の増加による作業効率低下に伴う事業進捗の遅れの発生や、熱中症等による労働災害の増加 |
|
中~長期 | 中 | ||
真夏日・猛暑日の増加による設備等への影響と修繕コストの発生 |
|
長期 | 中 | ||
海面上昇を起因とした高潮や洪水による設備の浸水、それに伴う運休の発生、運賃収入の減少、復旧コストの発生 |
|
長期 | 大 | ||
海面上昇を起因とした高潮や洪水による建物の浸水、それに伴う損失の発生と不動産価値および販売機会の減少 |
|
長期 | 大 | ||
機会 | 空調効率化等に伴うエネルギー使用量の削減によるコストの削減 |
|
短~中期 | 中 | |
再生可能エネルギーへのシフトに伴う将来の化石エネルギー価格増大に対する影響の低減 |
|
中~長期 | 大 | ||
再生可能エネルギーの需要拡大による遊休地(社有地・社有林)の有効活用 |
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長期 | 中 | ||
低炭素社会へのシフトに伴う新技術等の普及によるコストの削減 |
|
長期 | 中 | ||
災害に強い事業運営による復旧コストの削減および顧客の信頼確保 |
|
中~長期 | 中 | ||
環境優位性の維持・向上による公共交通機関利用者の増加 |
|
中~長期 | 大 | ||
環境性能の高い物件の競争力上昇と売上増加 |
|
中~長期 | 大 | ||
環境に配慮したサステナブルな商品やサービスの提供による売上増加と顧客の確保 |
|
中~長期 | 中 | ||
環境配慮型事業へのシフトによるESG投資の呼び込み |
|
短~長期 | 大 | ||
トランジション・ファイナンスを活用した資金調達による環境負荷低減の推進 |
|
短~長期 | 大 |
- ※5時間軸:短期0~2年、中期2~6年(2030年までを想定)、長期6~26年(2050年までを想定)
財務的な影響の評価(事業別)
気候変動によるリスク・機会において、公表されているデータ等を基に、一部の項目においてシナリオごとの2030年および2050年時点の影響額を試算ならびに影響度の評価を行いました。
- ※事業への財務影響度:大(10億円以上)、中(9億円~1億円)、小(1億円未満)と評価
影響額の試算に使用したデータ(以下の出典等を基に推計)
外部データ |
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[炭素税]
[再エネ調達価格(非化石証書価格)]
[電力調達価格(総合電力価格)]
[洪水発生頻度]
[真夏日・猛暑日]
|
内部データ |
[すべての事業]
[鉄道事業]
|
影響額の試算結果
【対象】すべての事業
移行リスク(政策・法規制)
項目 | 主な影響 | 影響額(百万円) | 事業への 財務影響度 |
|||
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1.5℃・2℃シナリオ | 4℃シナリオ ※6 | |||||
2030年 | 2050年 | 2030年 | 2050年 | |||
政府や自治体等による規制強化(省エネ法、炭素税等)に伴うコストの増加 | 炭素税の負担コストが発生 | 3,200 | 0 ※7 |
- | - | 大 |
- ※64℃シナリオでは、環境政策の積極的な推進は無く、炭素税は導入されないと想定
- ※7ネットゼロ達成のため炭素税の課税はないと想定
【対象】鉄道事業
移行リスク(技術)
項目 | 主な影響 | 影響額(百万円) | 事業への 財務影響度 |
|||
---|---|---|---|---|---|---|
1.5℃・2℃シナリオ | 4℃シナリオ ※8 | |||||
2030年 | 2050年 | 2030年 | 2050年 | |||
開発コストの増加、省エネ設備等への投資不十分によるコストの発生 | 省エネ設備等への投資を行わない場合、温室効果ガスの排出が削減されず、炭素税の負担コストが発生 | 319 | - ※9 |
- | - | 中 |
- ※84℃シナリオでは、環境政策の積極的な推進は無く、炭素税は導入されないと想定
- ※92031年以降の具体的な省エネ設備等の更新・投資は今後検討
移行リスク(市場)
項目 | 主な影響 | 影響額(百万円)※10 | 事業への 財務影響度 |
|||
---|---|---|---|---|---|---|
1.5℃・2℃シナリオ | 4℃シナリオ | |||||
2030年 | 2050年 | 2030年 | 2050年 | |||
エネルギー・資材の調達コストの増加 | 再生可能エネルギーの導入による調達コストの増加 | 21.3 | 21.2 | 64.1 | 63.8 | 小 |
- ※10長期における使用電力量は中期よりも低減することが推測されるため、各シナリオにおける2050年時点のエネルギー調達コストは2030年時点を上回らないと想定
物理的リスク(急性)
当社沿線に並行・横断する河川のうち、浸水による影響が特に大きいと考えられる以下の河川周辺における、鉄道資産等への影響額を試算しました。
〈対象河川〉 ①多摩川・鶴見川 ②帷子川・宮川 ③平作川
項目 | 主な影響 | 影響額(百万円)※11 | 事業への 財務影響度 ※12 |
|||
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1.5℃・2℃シナリオ | 4℃シナリオ | |||||
2030年 | 2050年 | 2030年 | 2050年 | |||
自然災害の激甚化・頻発化に伴う施設や設備への被害増加と復旧コストの増加 | 自然災害の発生頻度の増加に伴い、資産の損壊・復旧コストも増加 | ①:0 ②:0 ③:0 |
①:+119.9 ②: +38.0 ③: +47.4 |
①:0 ②:0 ③:0 |
①:+239.9 ②: +76.0 ③: +94.8 |
大 |
自然災害の激甚化・頻発化に伴う交通機関の運休増加や施設の営業停止とそれらによる売上の減少 | 自然災害の発生頻度の増加に伴い、運休による売上の減少も増加 | ①:0 ②:0 ③:0 |
①: +1.6 ②: +0.3 ③: +0.2 |
①:0 ②:0 ③:0 |
①: +3.2 ②: +0.7 ③: +0.5 |
中 |
- ※11・現在の100年に1度規模の影響額に対する、各年時点のリスク増加分
・2030年時点における洪水発生頻度は,現在と概ね同等であると想定 - ※12リスク増加分を含む全体の影響額と比較し評価
物理的リスク(慢性)
項目 | 主な影響 | 影響額(百万円)※13 | 事業への 財務影響度 ※15 |
|||
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1.5℃・2℃シナリオ | 4℃シナリオ | |||||
2030年 | 2050年 | 2030年 | 2050年 | |||
真夏日・猛暑日の増加による空調コストの増加 | 空調の稼働期間増加に伴い、エネルギー調達コストも増加 | +7 | 0 ※14 |
+18 | +66 | 中 |
- ※13電力調達価格および夏日・真夏日・猛暑日の日数を基準に試算した、2020年時点の推計コストに対する増加分
- ※142030年および2050年における真夏日ならびに猛暑日は増加する見込み
ただし、電力調達価格は低減することが推測されるため、1.5℃・2℃シナリオにおける2050年時点のエネルギー調達コストは2020年時点の推計コストを上回らない想定 - ※15増加分を含む全体のコストと比較し評価
機会
項目 | 主な影響 | 影響額(百万円) | 事業への 財務影響度 |
|||
---|---|---|---|---|---|---|
1.5℃・2℃シナリオ | 4℃シナリオ ※16 | |||||
2030年 | 2050年 | 2030年 | 2050年 | |||
空調効率化等に伴うエネルギー使用量の削減によるコストの削減 | 省エネ設備等の導入によりエネルギー調達コストを削減 | 450 | - ※17 |
- | - | 中 |
再生可能エネルギーへのシフトに伴う将来の化石エネルギー価格増大に対する影響の低減 | 再生可能エネルギーの導入により炭素税の負担コストを回避 | 1,766 | 3,155 | - | - | 大 |
- ※164℃シナリオでは、現状以上の省エネ推進の取り組みは無く、炭素税も導入されないと想定
- ※172031年以降の具体的な省エネ設備等の更新・投資は今後検討
鉄道事業の運輸収入推移試算
気候変動研究において、分野横断的に用いられるシナリオである社会経済シナリオの人口データをもとに、2050年までの運輸収入の推移を試算しました。
当社沿線の地域における人口動態予測にあたり、人口のデータは国立環境研究所「日本版SSP市区町村別人口推計」を使用しました。また、運輸収入は当社の実績等に基づいております。
なお、本試算は今後実施する鉄道事業施策をはじめとする、収入に影響をおよぼす個別の要素は一切考慮しておりません。
シナリオ分析による考察と今後の方向性
シナリオ分析の結果、脱炭素社会が実現する世界では、当社グループすべての事業において、炭素税が導入された場合の課税コストやエネルギー調達コストの増加が想定されます。また、地球温暖化が進展する世界では、自然災害の激甚化・頻発化に伴い、浸水害による資産への被害および鉄道事業においては運休による収入の減少、さらには平均気温の上昇による空調コストの増加が見込まれることが財務的な評価により明らかとなりました。
一方で、脱炭素社会が実現する世界においては、「省エネ」「再エネ」による脱炭素の取り組みによってエネルギー調達コストや炭素税の課税コストが低減できることが分かりました。また、自然災害や気温上昇の影響はあるものの、地球温暖化が進展する世界と比べ、資産等への被害、収入の減少や空調に対するエネルギー調達コストの増加が限定的であることも分かりました。
その他、環境優位性の維持・向上による公共交通機関利用者の増加、環境性能の高い不動産物件による競争力上昇と売上増加、環境に配慮したサステナブルな商品やサービスの提供によるレジャー・サービス事業および流通事業の売上増加の機会を得ることも予想されます。
これらを踏まえ、当社グループでは、脱炭素社会が実現する世界に向けて、引き続きリスク・機会に対する財務影響評価を行います。評価の過程において、特に影響の大きいリスクと認識した事項を中心に対処を検討し、リスクの最小化を図り、レジリエンスの向上に努めることで「社会の持続的発展への貢献」と「京急グループの持続的発展」のよりよい循環による豊かな沿線の実現を目指してまいります。
リスクへの対処および機会を捉えた取り組み
分類 | リスクへの対処および機会を捉えた取り組み | 該当事業 |
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移行リスク | 省エネの推進(省エネ運用、LED照明化、既存設備等の更新) |
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創エネの推進(太陽光発電等の導入) |
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再エネの導入推進 |
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ZEH、ZEB物件の推進 |
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物理的リスク | 既存施設および新築施設の自然災害対策 (浸水防止設備、法面防護工事、気象システム運用、損害保険への加入等) |
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災害対策計画の策定および継続的な見直し |
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異常時対応訓練の実施 |
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お客さまへの適時適切な情報発信の強化 |
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備蓄品の確保、サプライチェーンの複線化およびパートナーシップ強化 |
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屋外作業等の効率化および省力化 |
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建築物環境性能の向上 |
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屋上緑化・壁面緑化の設置 |
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機会 | 新技術導入の推進 |
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ESGに関する情報開示の推進 |
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地域やグループと連携したMaaSの拡充 |
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市場環境の変化に対応した商品やサービスの企画・販売 |
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リスク管理
当社グループは、リスク情報および危機情報を一元的に集約し管理することを目的とした「リスク管理委員会」を設置し、電鉄各部門およびグループ会社と連携してグループ全体の経営リスクの低減と顕在化防止のための活動および危機発生に備えた体制を整備しております。その中で気候変動リスクを、当社グループ全体の経営計画達成を妨げる可能性がある重要リスクのひとつとして特定し、その対処について継続的にモニタリングを行ってまいります。
さらに、気候変動への対応は当社の掲げるサステナビリティ重要課題のひとつでもあり、気候変動によってもたらされるリスクや機会の特定・対処方針の策定については「サステナビリティ委員会」において全体管理を行い、関係各部署・グループ会社にて議論・施策の推進を図ります。その内容については、リスク管理委員会との連携を図ったうえで、取締役会に報告・提言することで適切な管理・監督体制を取ってまいります。
指標と目標
2050年カーボンニュートラルに向けた取り組みの推進
当社グループの事業活動においては、多くのエネルギーを使用し、それに伴い多くの温室効果ガスを排出しています。当社グループでは、長期環境目標として「京急グループ 2050年カーボンニュートラル」を掲げ、当社グループ全体での温室効果ガス排出量実質ゼロを目指します。この目標を達成するために、①これまでも継続的に取り組んできた「省エネ」に資する施策のさらなる検討・推進、②太陽光発電等をはじめとした「創エネ」の検討、③「再エネ(再生可能エネルギー)」の活用拡大の検討等を積極的に実施し、世界規模で拡大する地球温暖化の防止に向けて取り組むとともに、当社グループのサステナビリティに関わる取り組みを推進してまいります。
中間目標の設定と温室効果ガス排出削減進捗状況
2050年度カーボンニュートラルの達成に向けて、2030年度において、当社グループにおける温室効果ガスの排出量を2019年度実績と比較して30%削減する中間目標を掲げております。
京急グループ温室効果ガス排出量実績値
2019年度 (目標基準年度) |
2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | |
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温室効果ガス排出量 | 249,265 | 215,593 | 198,568 | 194,382 |
scope1 | 90,657 | 67,847 | 64,226 | 65,824 |
scope2 | 158,607 | 147,746 | 134,342 | 128,558 |
- ※小数点以下切り捨て
- ※エネルギー使用量等の詳細については、こちらをご参照ください。
サステナビリティ重要課題に基づくKPI
当社では、2024年5月に公表した京急グループ総合経営計画とあわせて、当社グループが長期的・持続的に社会へ価値を提供するため、サステナビリティ重要課題を見直しております。「地球環境保全への貢献」をサステナビリティ重要課題のひとつとして策定し、さらに関連するKPI(重要業績指標)の指標および目標を設定いたしました。今後、適切な取り組みの推進とともに、モニタリングを図ってまいります。
サステナビリティ重要課題(地球環境保全への貢献)に基づくKPI指標および目標(一部抜粋)
指標 | 目標値 | 年度 | 対象 |
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温室効果ガス排出量削減 (scope1・2) |
実質ゼロ | 2050 | 京急グループ全社 |
30%削減 (2019年度比) |
2030 | ||
鉄道事業における 電気使用量に占める 非化石エネルギーの割合 |
100% | 2030 | 京急電鉄 |
保有する台数に占める 非化石自動車の割合 |
5% | 2030 | 京浜急行バス 川崎鶴見臨港バス |
8% | 京急タクシーグループ | ||
ZEH認証取得率 (主幹事新規分譲マンション対象) |
100% | 2024~2040 | 京急電鉄 京急不動産 |
ZEB認証取得率 (新規竣工賃貸・複合物件対象) |
50% | 2024~2040 | 京急電鉄 |
京急グループにおける環境負荷の低減に向けた取り組み(一例)
交通事業
当社グループが運営する公共交通機関は、自家用車と比べ環境にやさしい交通手段であることから、かねてより公共交通機関の利用促進やモーダルシフトを推進する「ノルエコ(乗るだけでエコ)」に取り組んでまいりました。引き続き、公共交通機関の利用促進に努めるとともに、その他環境負荷低減に係る取り組みを推進してまいります。
鉄道事業においては、これまで一部で導入していた再生可能エネルギー由来の電力を、2024年4月から全線の運転用電力量および業務用電力量を対象に置き換えており、年間の温室効果ガス排出量削減効果は約100,000トンに相当します。
バス事業においては、環境にやさしいバスの導入を進めており、京浜急行バスでは、ハイブリッドバス、燃料電池バスや小型電気バスに加え、2024年3月には大型電気バスの運行を開始しております。川崎鶴見臨港バスでは、ハイブリッドバス、バイオディーゼル燃料を使用したバスのほか、2024年3月には川崎市では初となる大型電気バスを導入し、動力となる電気には再生可能エネルギー由来の電力を使用しております。タクシー事業においても、2023年4月からEV車両50台を導入しており、温室効果ガスの削減に努めています。
また、当社が運営する地域情報/MaaSサイト「newcal」の経路検索機能内において、2022年11月から「温室効果ガス排出削減量の可視化機能」を実装しております。2023年10月には、三浦半島地域における電動モビリティの積極的な導入やMaaSの利用促進により、地域脱炭素の推進および地域課題の解決も同時に図る取り組みの推進を目的とした「三浦半島地域における脱炭素化及び地域課題の解決に向けた連携協定」を、当社、神奈川県および株式会社サンオータスと締結しました。これらの取り組みを通じて、MaaS基盤を通じたマイカーから公共交通機関の利用へ行動変容を喚起するとともに、当社沿線をモビリティ先進地域へと成長させ、さらなるモーダルシフトを促進いたします。
不動産事業
リノベーション事業においては、沿線の古民家や空き家等の利活用を推進しております。2021年1月には、築90年の木造建築群をリノベーションし、コワーキングスペースやソーシャルカフェ等の機能を有する複合施設「SHINAGAWA 1930」をオープンしました。2024年2月より販売を開始した、当社沿線初の一棟リノベーションマンション「プライムフィット横浜富岡」では、鉄道業界で初となる、共用部に引退した鉄道車両の部品を利活用しました。これらの取り組みを通じて、価値あるものを未来に継承することや工事に伴う環境負荷低減にも貢献しております。
レジャー・サービス事業
京急イーエックスインでは、再生可能プラスチックを原料としたアメニティの提供や、シャンプー類の詰め替えボトル使用によるプラスチックごみの削減、2泊以上ご宿泊のお客さまを対象とした客室シーツ類の交換や、客室・浴室の清掃を行わずタオル類のみを交換するエコ清掃を一部館において実施するなど、環境負荷の低減へご協力をいただいております。
流通事業
京急百貨店では、2013年7月に百貨店として初となる「エコマーク認定店舗」の認証取得をはじめ、お客さまからご注文いただいた商品の販売からお届けまでに排出されるギフト1個あたりのCO2排出量に、森林支援で得られたCO2吸収量をあてたカーボンオフセット型のお中元・お歳暮ギフト「楽ecoギフト」の販売など、地域の環境に配慮した事業活動に取り組んでおります。2023年9月には、テナント店舗やお客さま自身のサステナビリティの取り組みを紹介するパネル展や、表紙に間伐材を使用したオリジナルノートを作るワークショップなど「地球をえがおに サステナブル ライフスタイルフェア」を開催しました。さらに京急ストアでは、廃棄物の削減・再利用・再資源化に取り組んでおり、食品廃棄物の削減、食品残渣のリサイクル、エコトレーの使用や植物由来の原料を使用したバイオマスポリエチレン袋、環境素材を使用したカトラリーの導入によるCO2排出量の削減や抑制に寄与しております。また2023年11月には、神奈川県が「かながわ脱炭素アクション創出事業」の一環として、輸送時の燃料使用量が少ない県産農産物の購入が脱炭素につながることをPRし、お客さまの脱炭素意識の醸成やライフスタイルの転換につなげる取り組みを神奈川県内の2店舗(京急ストア追浜店、京急ストア久里浜店)において行いました。
持続可能な社会の形成と環境保全機会の創出
持続可能な社会の形成を目的として2023年2月から始動した「みうらの森林(もり)プロジェクト」では、当社が三浦半島に所有する約100haの社有林を、神奈川県森林組合連合会協力のもと間伐等により健全に管理し、森林の有するCO2吸収機能の一層の発揮と、生物多様性を維持しながら未来へつながる機能豊かな美しい森林を目指しております。
また、森林管理で発生した間伐材のほか、当社が列車の安全運行のため伐採する線路付近の樹木などを、株式会社タケエイグリーンリサイクルと連携し、同社が運営する「横須賀バイオマス発電所」において「木質バイオマス燃料(木質チップ)」 として発電の一部に使用しております。2023年4月からは葉山マリーナにおけるすべての使用電力に、上記の発電所由来の環境価値(トラッキング付FIT非化石証書)が付帯された電力を導入し、エネルギーの地産地消を体現しております。また、間伐の一部はアップサイクルし、駅設置のベンチやタンブラー等への製品化を行うほか、間伐後の整備された森は外部の事業者と連携地域コミュニティの形成や沿線に広がる自然に触れ合う場として展開しております。
さらに当社では、神奈川県による「小網代近郊緑地特別保全地区」の指定に同意し、三浦市に所有する約10haを自主保存するとともに、約2haを神奈川県に寄付いたしました。2014年には森林内を散策するための木道を一部整備して神奈川県に寄付、2018年には常設トイレの設置にともない神奈川県に敷地を貸与するなど、関係機関とともに「小網代の森」の自然環境保全に協力しております。
2024年6月27日更新