羊羹を挟んだヨコスカベーカリーの「シベリアケーキ」。
1/2竿は480円、1竿は980円。


【和】あん(または羊羹)をカステラでサンドした和菓子


大正ロマンが香る、ハイカラな和ケーキ。

時は大正時代。登場するのは、許嫁である少尉へのひたむきな恋を貫く、おてんばな大和撫子、花村紅緒…。これは、1970年代の少女漫画『はいからさんが通る』ですが、今回ご紹介する「シベリアケーキ」は、紅緒をどことなく彷彿とさせる、和魂洋才な焼き菓子です。

文明開化に沸いた明治時代、日本は西洋文化を驚きを持って次々と迎えました。輸入された文化は、日本風にアレンジ。現代に続く和洋折衷スタイルを生み出していったのです。日本古来のあんを南蛮菓子カステラでサンドした「シベリアケーキ」もそのひとつ。そもそも、街のパン屋さんがパン釜の余熱でカステラを焼き、あんパンのあんを使って味にアクセントを付けたもので、モダンな味だと人気を博したようです。カフェの走りである、ミルクホールでも売られ、牛乳やコーヒーなどと一緒に食べるのが流行ったとか。

さて、知らない人なら、「ロシアのケーキ?」と思い違いをしてしまいそうな名前の由来ですが、これにはいくつか説があります。まずは、あん部分がシベリアの大雪原を走るシベリア鉄道に似ているから、という鉄道説。革命で日本に亡命したロシア貴族のお姫様が、故郷シベリアの恋人を思って作ったというロマンチックな悲恋説。そして、日露戦争の勝利を記念してお菓子屋さんが考案したという戦勝記念説…。でも、甘いお菓子にキナ臭い話は似合いません。ここはやっぱりオトメ気分で甘い説を信じてみたくなります。

ところで、”はいからさん“の紅緒はシベリアに出兵した少尉の帰りを待ち続け、最後に結ばれて、めでたしめでたしで幕が下りました。モダンな外見に古風な心を包み込んだ、”はいからさん“の恋。甘い甘いシベリアケーキは、そんな大正ロマンの味といえるのかもしれません。

 

 


上/カステラは、長年使い込んだ窯でふんわり焼き上げる。


下/型にカステラを敷き、トロッとした羊羹を流し込む。



一度は食べたい、あの店のスイーツ

ヨコスカベーカリー
神奈川県横須賀市若松町3-11

上/2代目の佐藤義輝さんと3代目の昌良さん。
下/レトロなショーケースにはできたての甘食などがズラリ。

シベリアケーキ
朝8時から夜8時まで、客の姿がひきもきらない「横須賀ベーカリー」は、昭和3年の創業。地元で知らない人はいないと言われる“街の名物パン屋さん”だ。もともとは、新潟の農家の7男だった初代が、「東京で一旗揚げよう」と横須賀にいたパン作りの名人に弟子入りしたのが、この店のはじまり。現在は、2代目の佐藤義輝さんと3代目の昌良さんが親子で店を守っている。
  パンは全部で30種類。それを毎日3回に分けて焼く。並べるそばから、待ってましたとばかりに、みるみる売れていく。この人気のヒミツは何だろう。聞いてみると、「創業当時の製法で作っているだけ。特別なことはなにもしていないよ」と謙虚な答えが返ってきた。それでも、添加物は一切使わない、小麦粉などの材料は上質なものに限っている、手間ひまを惜しまないなど、なんとも良心的で、これならおいしいはずだと納得。シベリアケーキも、こうした昔ながらのやり方で、ていねいに作られている。まず、卵、小麦粉、砂糖に、まろやかさを出すための白みつを加えてカステラを焼き上げる。そこに寒天、砂糖、あんこで練った羊羹を流し込む。もう一枚カステラを乗せたら、1時間ほど寝かせて、できあがりだ。いたってシンプル。でも、カステラ、羊羹ともに手作りなので、実はとても手間がかかっているのだ。「けっこう面倒だから、他の店はやめちゃったのかもしれませんね」と3代目。1日に2回焼いて、売れ残ることはめったにないという。昭和レトロな店先に並ぶ、古き良き時代のやさしい味わい。横須賀を訪れたらぜひ食べてほしいおいしさだ。


Data
●イートイン/なし
●お取り寄せ/なし
●賞味期限:製造日より3日間 
※夏場は要冷蔵。
●8:00〜20:00
●日曜休
●横須賀中央駅から徒歩1分
●046-822-0233

上/ふわふわのフランスパン80円
下/これが1竿分約30cmの「シベリアケーキ」。名前の由来は、日露戦争の戦勝記念説を推すとのこと。

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