両国と聞いて思い浮かべるのはまず「相撲」、そして、「ちゃんこ」。
でも、そもそもなぜ両国にちゃんこ料理店ができたのだろうか? 
そして、なぜちゃんこ=「鍋」なのか? 
意外と知られていない名物・ちゃんこのルーツや、行ってみたい店をご紹介したい。


「ちゃんこ」って何だろう? 印象は、漠然と「いろいろ入った鍋」でも、味噌なのか醤油なのか塩なのか、だしはかつお節か鶏ガラか、何の素材が入っていると「ちゃんこ」になるのか、家庭でやる「寄せ鍋」とどう違うのかわからない…という人も多い。
「ちゃんこ」という名前は、もともと長崎に伝わった金属製の中華鍋「チャングォ」がなまったという説と、弟子たちが親方のことを親しみを込めて呼ぶ「ちゃん」と、弟子である「こ」が一緒に食べる料理を指すという説がある。
でも、具体的に何が「ちゃんこ」か…というと、やはり定義ははっきりしない。それもそのはず、もともと相撲部屋で作られる料理の総称が「ちゃんこ」なのである。つまり、カレーもラーメンも、相撲取りが作れば「ちゃんこ」。ただし、相撲部屋では、さまざまな栄養をバランスよくとれる鍋料理をよく作っていたので、それが「ちゃんこ鍋」として、一般に広まった。ひとつの鍋から食べると連帯感が高まる意味もあり、ファンや後援会の人が訪れたときなども、ごちそうするのにラクなのだとか。
ちなみに、発祥は明治末期。十九代横綱常陸山が所属していた「出羽海部屋」から始まったという。
味付けは千差万別。いつも同じ味では飽きるから、同じ部屋でも何種類ものちゃんこがある。
「昔は、場所の初日は、四本足(豚・牛など)は土俵に手をつく形でゲン(縁起)が悪いからダメ、魚も『手も足も出ない』でゲンが悪いからと、『手をつかない』二つ足のニワトリを食べたんです。鶏ガラのスープを『ソップ』といい、鳥肉ベースの『ソップ炊き』と呼ばれるちゃんこが伝統的ちゃんこ」と、元力士の「成山」のご主人は教えてくれた。
ちなみに、相撲部屋で作られるちゃんこは、包丁で食材を切らず、お相撲さんが手でちぎるものだとか。また、稽古で汗をかくときに出る塩分を補給するため、かなり濃い味の場合が多く、普通の人にはしょっぱくて食べられないといわれている。そのため、ちゃんこ料理店では、普通の人たちが食べやすいよう、スープにも具にもさまざまな工夫を凝らし、それぞれの店の味を作り出しているのだ。
 
六時間かけて作る絶品の
塩味スープと自慢の「つみれ」は
飽きのこない上品な味わい


【巴潟】ともえがた

昭和51年、9代目友綱親方となった巴潟関が相撲協会を退職後、かつて部屋があった場所に「ちゃんこ料理屋」を開店した。
醤油味、塩味、水炊き、みそ味があるが、なかでもとりわけ人気なのが、塩味の「国見山ちゃんこ」。塩味スープは、鶏ガラを水からじっくり六時間もかけて何度もアクをとりながら煮出したもので、透明なのに深い味わいがある。
この塩味スープと好相性なのが、自慢の「つみれ」。毎日40キロものイワシをすり鉢ですって作るが、「機械で作るつみれは、カマボコみたいになってしまうんですよ。だから、頭と皮と骨をとって、味付けしながら練る。練りすぎてもダメ。そのときの魚の状態などを見ながら、ほどよい具合にするんです」(広報・佐久間氏)という。
グツグツあったかい鍋でおなかが満たされてきた後は、うどん、雑炊などでシメ。おすすめは、「塩味のときは雑炊。お味噌のちゃんこはうどん」(同)とのこと。
ちなみに、塩味スープは早いときには夜七時頃に終わってしまうため、予約時には鍋の味の指定をしたほうが無難だそうだ。

10キロのアジをすり鉢でする。練った後は、一晩寝かせて味をよくしみこませるとか。
国見山ちゃんこ 1人前2,940円
(写真は3人前)/スープが沸騰したら、白菜やゴボウを下に入れ、具材をキレイに並べる。牛肉、春菊、エノキは最後に加え、サッと火を通すだけ (基本的にお店の人がやってくれる)。

巴潟
●営業時間:平日11:30〜14:00
17:00〜22:00 土日祝11:30〜22:00
●無休
●都営大江戸線両国駅から徒歩5分
●TEL 03-3632-5600
※ランチでは、「本日のサービスちゃんこ」(840円)や、 「ちゃんこ昼食(幕内1,150円〜)」などがある。
本館の店内。新館と合わせて全300席
 
キャベツの自然な甘みが
鍋一杯にとけ出す、どこか懐かしい味


【割烹ちゃんこ 大内】


ソップ炊きは1人前2,500円(写真は2人前)/新鮮な野菜たっぷりで、キャベツと醤油のホッとする味

昭和58年、身長202センチという伝説の大型力士・大内山の開いた店で、現在は長男の大内明さんが先代の味を守っている。
「私自身、子供の頃から部屋に出入りしていたし、お客さんが来るとオヤジが作っていたので、自然に覚えた味」というちゃんこは、昔から変わっていない、鶏ガラを使ったコクのある「ソップ炊き」。
いちばんの特徴は、白菜ではなく、たっぷりのキャベツを使うこと。水分ではなく自然な甘みがスープにとけ出し、シャキシャキした歯ごたえが楽しい。
なめらかな食感の鶏のつみれも人気で、ショウガの風味が口に広がるおいしさだ。
割烹ちゃんこ 大内
●17:00〜22:00(平日はランチ11:30〜
13:30。昼の鍋は要予約)
●日曜・祝日定休(本場所中は無休)
●都営大江戸線両国駅から徒歩8分
●TEL 03-3635-5349

店内には当時の写真や化粧回しなどが
飾られ、相撲ファンには嬉しい。
 
元力士が作るみそちゃんこは
具材の持ち味がひとつになった
まろやかなうまさ


【ちゃんこ成山】

出羽海部屋出身で、父親も力士だったという成山明秀さん。27歳のとき、10坪の場所に、自ら畳を担いでいって作った店で、徐々に評判となり、店も大きくなっていったとか。
今では「七色のちゃんこを持つ男」といわれるほど豊富な味を持つが、なかでも人気なのが「みそちゃんこ」。これはかつおだしと鶏ガラを使ったもので、豊富な野菜や鶏肉、豚肉などをいっぺんに鍋に入れて煮るもの。
「フタをするとか皿盛りとか、そんな上品なこと、相撲取りはやらない。よくかきまぜて煮込むだけ」というが、具材の味がひとつになり、実にまろやかだ。

カウンターごしに、ご主人が豪快に鍋を作る姿も見られる。

ちゃんこ成山
●17:00〜23:00
●日曜・祝日定休(本場所中は無休)
●都営浅草線浅草橋駅から徒歩5分
●TEL 03-3861-5640

みそちゃんこ 1人前1,890円
(写真は2人前)/野菜が10種類くらい入っており、あっさりしたみそ味で、食が進む。

 
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